アカデミック・ライティング

卒業研究のレポート提出が昨日でした。(毎年学科の会議で決めるため日付は固定されていません。物理学科では卒業研究のことを特別研究と呼んでいるので、正確には『特別研究レポート』です。)物理学科で4年間学んだ成果をまとめる最後の総決算かと思います。12月くらいから序論を書き始め、原理、方法、結果と考察など部分部分で提出・添削を行いながら完成させます。1年生から3年生まで実験レポートも細かく添削しているのですが、まだまだ文章の構成力や論理展開など不十分で、総決算となるよう、可能な限り丁寧に添削を行っています。

卒業生から、会社に入ったら報告書をたくさん書くので、文章力は重要だとのコメントも貰っており、卒業研究レポートを書く上で、最近の学生の傾向とともに注意点を記憶が新しいうちにまとめておきたいと思います。ちなみに私自身は高校自体の学内模試で国語の偏差値30台をたたき出した経験をもつような教員であり、他人にコメントできる立場ではないのですが・・・・(今思えば、多数の意見を類推する国語の問題は、変わり者には向かなかったのでしょう。)

「だ・である」調で書く

日本語の文章では、「です・ます」調と「だ・である」調があり、読み手に与える印象が異なります。両者が混じった文章を読むと違和感を感じるのですが、卒論を追い込んで書いていると気にならなくなるようです。科学研究の成果を説得させるための文章である卒業研究レポートは、「だ・である」調で書くべき文章です。文末が「~~だ。」「~~である。」と終わっているか確認して下さい。どちらでもない終わり方もあるので、文末に「~~です。」とか「~~します。」などの表現が入っていないか確認することが重要です。コンピュータでも簡単に確認できる事項なので、Wordで文章をタイプしていたら、コンピュターに怒られる時代が来るかもしれません。(と、いうより、その程度のことは文章を読んでいて、書いていて、違和感を覚える人間になって貰いたい。)

話し言葉のまま文章を書かない

高校時代に国語が非常に苦手だった私も、大学教員になって数多くの文章に囲まれるようになり、文語体と口語体の違いを意識できるようになってきました。話し言葉で使っていることをそのまま文章に落とすと違和感を感じる表現があるのです。今回の添削で特に気になったのは、文頭に「なので、」を接続詞として用いている場合です。科学研究の論文では、原因と結果の因果関係を説明する機会が多く存在し、「そのため」、「従って」、「ゆえに」などの接続詞を多用します。しかし、「~~だと観測された。なので、~~」のような表現が添削に回ってきます。ここは、「~~だと観測されたので、~~」と修正するか、別の接続詞に置き換える必要があります。多くの文章を読んで、文章の中で使われる表現とそうでない表現を区別できる人間になってほしいと思います。

シンプルに説明する

他人に説明する文章においては、何を盛り込み、何を切り捨てるのかがポイントになります。読み手となるターゲットを想定すると盛り込まなければならない事項が明確になるかと思います。理解される文章のためには、相手を理解することから始めなければなりません。実験方法の記載など自分向けのマニュアルのような文章になってしまう傾向があるのですが、実験をしないない人が再現できるように書く、この考え方が重要です。余分な文章が多いと理解を妨げるので、必要最小限にしながら、必要なことを漏れなく書かなければなりません。どのようにシンプルにするのか試行錯誤するしかないでしょう。

科学的論理性

物理学科の学生には科学的に論理的な文章を書くことを求めています。研究者の性なのですが、科学的にあいまいな文章を許すことができません。卒業研究レポートの文章であっても科学的に正しいことの積み重ねで物事を証明させようとしてしまいます。大学教員に添削させると、この点に妥協することができないので、今回も、数多くのディスカッションを添削指導の中で実施しました。些細なことにこだわると感じた学生も、研究者として真摯に科学に立ち向かっているためだと考え、どうか諦めて頑張って執筆してください。