この十年くらい取り組んでいる研究テーマ、というか、研究物質(対象)を紹介します。
金属アセチリドです。
アセチレンという分子は炭素の三重結合(sp混成軌道)をもつ反応活性な物質であり、化学製品の原料として非常に重要な分子であり、物理化学的にも直線構造をしている興味深い分子です。このアセチレン分子と水素原子を銅や銀で置換したのが、銅アセチリドや銀アセチリドと呼ばれる金属アセチリドです。銅Cu、銀Ag、金Auは周期表で11族に属し、昔は11族は1B族とも呼ばれ、水素やアルカリ金属が属する1族(1A族)と近い性質があります。つまり、上図のように元素を置換できるのです。
(と、いっても、現実はかなり違って、図のように共有結合するような書き方は模式的であって、イオン結合的な特徴の方が強い感覚があります。)
これらの銅アセチリドや銀アセチリドは、古くから知られる基本的な分子なのですが、爆発性のある物質として有名であり、あまり盛んに研究が行われてきませんでした。そんなニッチな研究対象を見つけ、細々と研究を行っています。もちろん安全に研究を行うことが最も重要であり、例え爆発しても大丈夫なように少量での実験をしています。文字通り、細々と研究をしています。
最近は、置換基をつけた、例えば、銀フェニルアセチリドなど爆発性のない物質も取り扱うようになっています。