ナノサイエンス・ナノテクノロジーの「ナノ」という言葉が、非常に小さいサイズの世界であることを前回の投稿で説明しましたが、そのナノを研究する意義について今回話したいと思います。
ゴールド(金)は何色ですか?
普通の人は金色と答えるでしょう。しかし、ナノの研究者は、どんな大きさ・形のゴールドですかと逆に質問します。ゴールドという元素を指定するだけでは答えることができないからです。実は、金のナノ粒子は、金色をしていないのです。
話が逸れるが、ゴールドの金色も興味深い色で、一般の金属とは異なる色合いをしています。これは、金原子の電子軌道に対して、相対性理論の補正をして初めて現れる色合いだそうです。ゴールドを眺めながら、非常に小さな金原子を想像し、その周りを回る電子のスピードが光速に近く、宇宙空間を記述する相対論の効果が表れるのだなぁ~~と意味深な感慨にふけることもあります・・・・(怪しい??)
さてさて、話を戻して、ゴールドが金色をしているのは、指輪や小判など普通の大きさの金の塊のときの話であって、ゴールドがナノ粒子になると金色ではなく、赤色に変化します。この赤色は、古くからステンドガラスなどに応用されており、ガラスの中に金をほんの少し加えると綺麗な赤色に色づくことが経験的に知られていました。ガラスの中で金がナノサイズの大きさで分散しているためだと現在では分かっていますが、ガラス職人の間では、金赤(きんあか)と呼ばれているそうです。
金のディスク金とナノ粒子の溶液
金のナノ粒子が赤色へと変化するように、多くの物質がサイズをナノへと変化することで、色(光学特性)・電気伝導性・磁性など様々な物性が変化します。つまり、人類に有益な物質を作成しようと考えたときに、物質を混ぜるだけでなく、そのサイズを制御することで、新しい性質を獲得することができるのです。ナノとは非常に小さな世界であるため、その制御は困難でもありますが、チャレンジする甲斐のある分野でもあるのです。