新型コロナウイルスCOVID-19の蔓延が続く中、少しでも集団免疫に貢献しようと大学の講義の中でワクチンの話をしたので、紹介したいと思います。まず、申し上げたいのは私自身はワクチンの専門家でもなければ、医学や生物学の専門家でもありません。しかし、科学者の一人として、情報発信する重要性を東日本大震災の放射能漏れの事故の際に痛感しました。出来る限り正しい情報を発信する努力をしますが、ご了承の上、この記事をご覧頂けましたらと思います。不確かさな表現や間違った表現などありましたら、ご連絡いただけましたら幸いです。連絡先へのリンク
日本大学文理学部物理学科の教員として、総合教育科目(一般教養と呼ばれる科目)である「現代社会を支える科学技術」という科目を担当しています。文理学部という哲学科や英文学科、心理学科、体育学科、さらには、情報科学科や化学科など文系学科から理系学科まで幅広い専門分野にまたがる学生に対して、科学教育を行っています。普段は学生にとっつきやすいテーマとして、スマートフォンを挙げ、スマホの科学技術要素を一つ一つ解説していくというスタイルで講義を行っています。(シラバスはこちら)
文系・理系の両方の学生に講義を行っているので、その目的は科学的に正しい判断を行えるよう科学リテラシーを涵養することを目指しています。新型コロナウイルスのワクチンをテーマに取り上げたのは、科学リテラシーを養成する上で最適なテーマだと考えたからです。事実、学生にとって関心が高く、ワクチンを接種するか、接種しないかの判断が求められており、そんな学生に科学的知識を伝え、自分自身の判断で接種を決めてほしいと考えました。
具体的に講義で伝えたことを列記したいと思います。
・接種を考える上で信頼できる情報源を提示しました。
厚生労働省 新型コロナワクチンQ&A https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/
山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信 https://www.covid19-yamanaka.com/
・m-RNAワクチンに関して
m(メッセンジャー)-RNAワクチンはコロナで初めて承認されたワクチン技術です。当然、長期的な効果など不明な点はあるのですが、だからこそ、このワクチン技術の素晴らしさを伝え、接種の判断を行ってもらいたいと考えました。m-RNAは不安定な物質のため低温で保管する必要があります。ファイザーだとマイナス75℃、モデルナのワクチンだと、マイナス20℃で保管しなければなりません。この要請を不便ととらえるのではなく、不安定な物質を体内に入れて、それが壊れるまでの間に免疫を作成しているのであって、長期的な副反応を低減するメリットだと考えてもらいたいと思います。
・臨床試験データ
コロナワクチンの有効性をどのような試験を経て確認されたのか、3万人弱の被験者に対して、ワクチン接種群とプラセボ(偽薬)接種群に分け、その後、ワクチン接種をした人と偽薬の人でどの程度コロナに感染したかを比較した結果を紹介しました。90%を超える有効性は、今でも驚愕しているワクチン技術です。
・副反応に関して
学生と会話をしていてコロナのワクチンに関する正しい知識が低いことを感じていました。コロナのワクチンはm-RNAワクチンであり、コロナウイルスのごく一部の遺伝子情報を体内に打ち込み免疫を獲得するものです。つまり、副反応で、頭痛や発熱などの症状はコロナに罹った反応ではなく、免疫を作っているだけの体の反応なのです。この事実を伝えるだけでも、ワクチン接種を必要以上に怖がらないようになると思います。
講義の中では、コロナウイルスのワクチン接種に関して自分自身の意見をレポートとして提出させる課題を出し、ワクチン接種にそれぞれの学生が向き合ってもらえるようにしました。本来であれば、課題など出さずにも考えてもらいたいのですが、普段の講義より、しっかりとしたレポートが多かった気がします。
最後に講義動画の抜粋を載せておきます。先週の講義の振り替えりや、説明終了後の質問時間は省いています。