1と0.9999…

文理学部の良いところは文系と理系の交流にあります。山中湖のセミナーハウスで研究室の合宿をしていたとき、一緒に宿泊していた文系の学生から私が物理学科の教授だと知って、「1と0.9999…は同じ数字なのですか?」という質問をうけた。当然、お酒を飲みながらの席での質問であり、宴会時の小ネタとして紹介したい。実は、昨日は研究室の新配属学生の歓迎会(進級祝いの飲み会)で、そこでもこの小ネタを披露してしまっただが、飲み会の写真だけ最初に示し、こんな雰囲気の中での会話だと思い読み進めて欲しい。

私が最初にこの問い掛けを気にするようになったのは、高校時代までさかのぼる。高校の数学の先生が、「1と0.9999…の間に数字はないでしょう。だから、1と0.9999…は同じ数字なのです。」と言ったのである。しかし、私は納得がいかなった。1と0.9999…の間に数字がないことは認めるが、単に隣り合った数字であるだけで、別の数字かもしれない、そんな可能性はないのか。そんな思いから納得できなかったのである。
その後、お酒を飲むようになり、その度に考えにふける時期があったのだが、大学で研究室に入ったか、入っていないかの頃、納得できる説明が見つかったのである。1と0.9999…は隣り合った数字かもしれない。では、その両方を2倍してみよう。2と1.9999…になるだろうが、この2つの数字も隣り合っている。また、その差は、1と0.9999…のときと同じである。つまり、1と0.9999…の間隔は数字を2倍にしても変わらないのである。2倍以外に、何倍、何をかけても間隔が変わらない数字である1と0.9999…を区別する意味はあるのだろうか。そこで、ようやく、1と0.9999…を数字として区別する意味がない、つまり、同じ数字であると納得できたのである。

こんな会話をお酒の席でしていると、理解できないことが、頭脳の問題なのか、お酒の問題なのか、分からなくなってくる。そこで、最後に誰もが納得できる1と0.9999…が同じ数字であることの証明を示して、気持ちよくお酒をもっと飲めるようにするのである。
0.3333…=1/3と分数で表せるけど、他の数字も考えてみよう
0.1111… = 1/9
0.2222… = 2/9
0.3333… = 1/3 = 3/9
0.4444… = 4/9
0.5555… = 5/9
0.6666… = 2/3 = 6/9
0.7777… = 7/9
0.8888… = 8/9
ここまで並べると、0.9999…を分数で表すと、どう書けるかわかると思うが、0.9999… = 9/9 つまり1と同じ数字なのである。