カテゴリー別アーカイブ: 実験装置

3Dプリンタで3Dプリンタを作る

研究室に3Dプリンタがあることを以前紹介したことがあるが、その3Dプリンタを使って、もう1台3Dプリンタを作成しました。

 

青色の部品は、別の3Dプリンタで印刷したパーツであり、アルミフレームなど様々なパーツを繋ぎとめる役割を果たしています。この3Dプリンタで3Dプリンタを作るという作業は、RepRapプロジェクトと呼ばれており、3Dプリンタの世界では有名なようです。
3Dプリンタを作ろうと思ったきっかけは、マグネトロンスパッタ装置に導入する部品を3Dプリンタで印刷しているのだが、真空内に入れるためプラスチックパーツの細かな修正が必要で、細かな調整ができる3Dプリンタを必要としていたからです。随分以前から制作に取り掛かっていたのですが、ようやく満足のいく3Dプリンタへと完成したので、ホームページで公開しました。

作成したのは、デルタ型3Dプリンタと呼ばれるタイプであり、シンメトリックな3本の支柱の上をアームが動くことで、フィラメントを吐き出すノズルが、3次元空間上を自由に移動できます。参考にした装置は、Kosselというタイプになります。3Dプリンタでは、ステッピングモータを動かしたり、温度をモニターしながらヒーターで加熱をしたり、数多くの制御が必要です。それを、Arduinoのマイコンでおこなっています。買ってきた3Dプリンタでは、その仕組みを理解することは大変ですが、3Dプリンタをゼロから制作したらマイコン制御などの知識も深まり、教育的効果もあると感じます。

 

Raspberry Pi + Qt その後

Raspberry PiとQtを使って実験装置を作ると宣言して久しいが、徐々に進んでいるので途中経過を報告しようと思う。
Raspberry Piとは名刺サイズの小型コンピュータで処理能力は高くないが非常に低価格なので、研究費を有効に活用する目的で、Windowsパソコンの代わりにRaspberry Piを導入し、実験装置の制御システムを開発しました。(作り始めた頃は、Raspberry Pi 2が出た頃でしたが、今では、Raspberry Pi 3まで進化しています。)

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マグネトロンスパッタ法という金属の蒸発手法を用いて、ナノ粒子を合成する実験装置を制御するのにRaspberry Piを使っています。真空計やアルゴンガスの流量コントローラーをADコンバーターとDAコンバーターを通じてRaspberry Piと接続し、直流高圧電源はUSBで直接コントロールしています。
制御プログラムは、C++で書いたのですが、グラフィカルに制御できるようQtも導入しています。スクリーンショットは、こちら

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研究費が潤沢にある研究室だとWindowsパソコンにすべて繋げて、LabVIEWとかで制御すると簡単に早く出来るのだろうが、Raspberry Piでも問題なく実験装置を制御できました。C++のプログラムで実験装置を制御していると、学生にとっては、その仕組みを理解でき、また、実験装置の改良もハード面だけでなく、ソフト面からも実施でき、低価格以外のメリットも感じています。

 

偏光顕微鏡

最近、実験装置の紹介をしていなかったので、1件説明します。偏光顕微鏡です。

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光学顕微鏡の一種なのですが、光源とプレパラートの間に1個、対物レンズと接眼レンズの間に1個、それぞれ、偏光子が加わっています。本学部の地球科学科など岩石の研究でよく使用される顕微鏡なのですが、物質の複屈折という性質を可視化することができます。詳しい内容は専門書などに譲るとして、私の研究室では、有機結晶の向きを観察するために活用しています。ナノ粒子では光学顕微鏡で観察するには小さすぎるのですが、比較的大きな結晶が得られた場合は、偏光顕微鏡で観察すると、針状の結晶が捻じれていることが観察できたり、透明な有機結晶が色づいて見られるので、それだけでも楽しい実験です。
細かな実験テクニックを紹介すると、この偏光顕微鏡は、普通の光学顕微鏡と違い、高価な顕微鏡であったので、CCDカメラなど撮影オプションを購入する予算的余裕がありませんでした。そこで、一眼レフカメラを購入し、顕微鏡アダプタで接続しました。

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キャノンのEos Kissシリーズのカメラを使用しているのですが、キャノンを使用することで大きなメリットがあります。カメラにEos Utilityという付属ソフトが付いてくるのですが、このソフトのおかげで、レリーズを別途購入する必要が無くなりました。顕微鏡でカメラをセットしたら、シャッターを押そうとしたら、顕微鏡が揺れて、目的の画角とズレて撮影されてしまうかもしれません。そんな際にリモートでシャッターを切るレリーズが必要となるのですが、Eos Utilityというソフトでは、USBで接続して、カメラを操作できます。つまり、レリーズを使わず、Eos Utilityからパソコンソフト上でシャッターを操作できるのです。そのまま、実験データとして保存も可能であり、一石二鳥の顕微鏡+一眼レフカメラのセットアップでした。

こちらの偏光顕微鏡は、最先端の科学研究のために使用している機器ですが、その原理を遊びに利用した偏光万華鏡を小学生に工作してもらうイベントを毎年、科学実験文化フェアで実施しています。興味のある方は、是非、ご来場ください。(今年は、工作できる個数をかなり増やして準備しています。)
今年のイベント案内
昨年のイベント説明ページ

3Dプリンタ

今年度になって、とある実験アイデアを実行するために3Dプリンタを買いました。

もちろん、その実験のための試作品を作っているのですが、ふと、こんな部品があれば良いなぁと思い立ったら、それが実現する環境というのは素晴らしく感じるようになりました。具体的には、こんな部品が欲しいと思ったら、およそのサイズを決めて、3DのCADソフトに図形を描いていきます。
AutoDesk 123D (直観的に図形を描ける便利なソフトです。)
CADでは、実際にこの円の直径は○○mmとか数字を入力していくと、ほぼ、そのサイズのプラスチックパーツが3Dプリンタから印刷されてきます。慣れてくると10分~30分くらいで部品の絵を描き、印刷は小さな部品なら1時間程度で形が作られます。そんな感じで作った部品がこちらです。

左側の部品はラマン分光の実験で反射光が予定外の向きに飛んでいたので、それを止めるビームストッパーです。厚紙を置いて、その場しのぎをしていたのが、組み込み部品のような納まりです。
右側の白いパーツは、フロースイッチのコネクタです。フロースイッチを装置のどうやって取り付けようか考えていたときに、3Dプリンタで印刷してしまえって作ってみると、当初の予定していたジュラルミンなどを切り出して固定したときと変わらない強度で装置にばっちり固定されちゃいました。
一度、この3Dプリンタの魅力を知ってしまうと、実験系研究室に欠かせないツールとなりつつあります。

工作室(物理学科)

このコーナーでは、十代研究室で所有している装置を紹介するだけで、物理学科や文理学部で所有している装置も紹介していきたいと思います。今回は、ずばり、「旋盤」です。旋盤とは、まず、写真を見てください。

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町工場にありそうな工作機械の1つです。物理学科では、学科共通の設備として工作室を管理しており、旋盤、フライス盤、ボール盤、バンドソーなどの工作機械がいつでも使用可能な状態となっております。物理の実験装置は自作の部分が多く、新しい実験をするために改造・改良することなどは、日常茶飯事です。私自身としては、ドイツ留学時代はテクニシャンと呼ばれる機械工専門の人物がラボに居たため、彼にこんなの作ってと頼めば(ドイツ語しかできないところが苦労したが・・)、翌日には出来ているという非常に恵まれた環境でした。その後の国立研究所のときは、これまた、装置開発室という組織があり、機械工作に関しては恵まれた(自分でやらなくても十分な)環境でした。日大文理学部ではというと、学科で工作機械を管理しているので、これも他の人に気兼ねなく使用できるので恵まれた研究環境であり、学生時代に培った旋盤の技術が錆びついていないかジュラルミン加工を行いました。
結果は、コンマ1mmの精度での可能を難なくこなせ、自分で設計した装置を自分で工作し、非常に満足した時間でした。あとは、この装置で最高の実験結果を得るだけ・・・・・と考えています。

 

ラマン分光装置

ラマン分光は、1つ前に紹介した赤外分光装置と同じく分子の振動を測定する装置です。では、なぜ、赤外分光器とラマン分光器の両方を研究室で所有しているかといえば、分子の振動の種類により、赤外線で測定できる振動とラマン分光で測定できる振動と違う場合があるためです。特に、炭素材料の評価にラマン分光装置を使用しています。

DSC00053このラマン分光装置は、自作の装置になります。と、言っても、Andor製の小型分光器shamrock163(焦点距離16cm)に光学部品を並べて(光軸調整は大変だけど)測れるようにしただけですが・・・ちなみに、小型分光器は望月研究室から頂いたものです。ペルチェ素子で-60℃程度まで冷却できるCCD検出器が付いており、測定した分光情報を解析するプログラムは、Visual C++で書きました。

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フーリエ変換赤外分光器

フーリエ変換赤外分光器FT-IRを所有しています(JASCO FT/IR-4100)。この装置は、分子の振動を測定する装置で、分子の種類によって固有振動数が異なる特徴を利用し、どんな分子が合成できたのか評価するためのものです。簡単にいえば、大小大きさの違うワイングラスをたたくと音の高さ(周波数)が違うように、分子も大きさ(正確には、原子量とバネ定数)の違いによって異なる周波数で振動します。その振動数に合ったエネルギーの光(分子振動は赤外線のエネルギー領域)を照射すると吸収が起こります。つまり、どんな光を吸収したかを測定することで、どんな分子が合成できたか分かってしまうのです。紫外可視のエネルギー領域の吸収は一般的に幅広いピークを与えるので、その情報だけで分子を同定することは困難ですが、赤外領域の分子振動の吸収ピークはシャープなことが多く、分子を決定(同定)することも可能なのです。

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紫外可視吸収分光計

日大文理に着任して、はじめて購入した装置が、日本分光(JASCO)の紫外可視吸収分光計のV-670です。はじめに購入するくらい研究に重要な、また、思い入れの強い装置でもあります。

なぜ、紫外可視吸収分光計がナノの研究に重要であるかと申しますと、ナノ物質の色が重要であるからです。例えば、ゴールドの色は誰しもが金色であると思いますが、ナノの大きさになると、つまり、金ナノ粒子の色は、赤色をしています。物質のサイズが変化すると、色などの光学特性・電気伝導性・磁性などが変化します。そこが、ナノ研究の最も面白いところとも言えます。ゴールドがナノ粒子になることで、金色から赤色に変化することを、しっかり測定しようと思うと、紫外可視吸収分光計が必要になってきます。この分光計は、物質がどんな色をしているのか、専門的に言えば、どんな波長の光をどの程度吸収するのかを測定する装置なのです。

JASCOのV-670ですが、紫外可視吸収分光計ですが、その測定波長範囲は、近赤外まで伸びており、190 nmから2600 nmまで分析可能です。エネルギーに換算すると6.5 eVから0.5 eV程度であり、半導体のバンドギャップの測定なども計画しています。

 

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簡易SEM

SEM (Scanning Electron Microscope)とは、走査型電子顕微鏡のことです。KEYENCE社の簡易SEMであるVE-9800を前任者から管理を引継ぎ十代研で所有しています。ナノサイエンスの研究が非常に小さな世界の研究であることを述べましたが、当然、その世界を調べるのに顕微鏡があります。しかしながら、中学や高校の実験で使用する顕微鏡(光学顕微鏡)は、ナノの研究に役に立ちません。光の波長は、400~750nm程度であり、その波長より小さな物体を研究するには、目で見る顕微鏡では無理なのです。光の波長より遥かに短い電子線を用いた顕微鏡であるから、ナノの世界も綺麗に観察できるのです。

 

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