RFIDタグ(ユニクロのレジにて)

正月休みの間にユニクロの初売りに行きました。買い物カゴの中にセーターや靴下など幾つかの品物を入れてレジに並ぶとセルフレジでした。カゴを置いて下さいと書いてある場所に実際に服の詰まった買い物カゴを置くと、瞬時に品物の種類と個数、金額がタブレットに表示されました。どんな仕組みだろうと不思議がっていたら、妻の一言、「最近のパン屋さんもトレーを置くとパン種類が一瞬で表示されるので、それと一緒でしょう。」全然、違う!! パン屋さんの場合は、トレーを上からカメラで撮影していて、パンの形状からAIを駆使して画像判断で商品を判別しています。ユニクロの場合は、買い物カゴに入った重なり合った商品から瞬時に品物を判別しているので、全く違う方式が取られているはずだと感じ、気になって自宅に帰って、どんな技術が使われているのか調べたのでした。

買い物タグに秘密があるだろうと考え、タグを見ても普通の紙で変なところは見当たりません。しかし、商品の中には怪しいシールが裏に貼ってあるものもありました。

タグの裏の怪しいシール

明らかに怪しいシールなのだが、そんなシールが貼っていない普通の厚紙のタグだけの商品も多数です。注意深く観察していると、普通の紙だと思っていたタグに関しても、灯りにかざすと怪しい陰影が浮かび上がってきました。

紙のタグに挟み込まれた部品

ここからは実験研究者の腕が鳴ります。もっと注意深く観察したいと、タグに挟まれた怪しい正体の分解作業に取り掛かりました。紙タグを割いていくと金属の薄膜に到達することが出来ました。(力業で分解しましたが、Youtubeで分解している人の動画を見ると、接着剤の粘着力をドライヤーで温めることで弱めた後に分解していたので、私の技術もまだまだで・・・・)

RFIDタグ

金属のアンテナのような形状が見えてきたので、電磁波で情報のやり取りをしているのだろうと予想は付きますが、アンテナの中央部分に1mmにも満たないような黒い点(写真は赤で囲っている)の電子部品が存在します。
この後は、インターネットでの調べものになりますが、ユニクロのセルフレジの仕組みは、RFIDタグというもので、黒い点の電子部品がICチップとなっており、商品情報が書き込まれていました。電磁波(電波)をアンテナで受信することで情報のやり取りをタグとセルフレジの間で実施しています。おそらくパッシブタグという種類のRFIDタグで、物理原理としては、SuicaやPASMOなどのIC乗車券と同じになります。SuicaやPASMOには電池が入っていないのですが、代わりにコイルが埋め込まれており、自動改札機で電磁誘導という高校物理で習う現象を利用して、IC乗車券が電気(エネルギー)を獲得し、改札機の間とで情報通信を行っています。ユニクロのタグもセルフレジが発射する電磁波(電波)をアンテナが受信するだけでなく、アンテナ部分がコイルの代わりにもなっていて、電波を受信することで得られたエネルギーを使って、中央の極小のICチップが動作して、商品情報を電波として、タグからレジへと発信していたのです。電波が発信されている場所もセルフレジの受信機により特定することも可能であり、重なり合った買い物カゴの中の商品を個々のタグから発信される情報を元に特定し、商品一覧を瞬時に判定しているのでした。

このRFIDタグは、セルフレジだけでなく、商品棚に直接電波を向ければ、在庫管理や棚卸しも自動で瞬時に行えることができるので、画期的な方法だと正月早々、感心してしまいました。また、コスト的には、タグ1枚あたり10円程度で製造できるそうで、SuicaやPASMOの技術が向上して、ここまで到達していることに驚くとともに、一般市民の生活向上が、高度な物理学の原理の上に成り立っていることを伝えたく、ブログ記事にしています。(物理を難しいと敬遠するのではなく、大事な学問であることを理解して頑張って貰いたいのだが、これは、一番、難しい。)

日本大学文理学部では、すべての学科の学生を対象とした「現代社会を支える科学技術」という講義を担当しています。スマートフォンの技術要素を毎回解説するスタイルの講義ですが、電磁誘導を解説する講義回もあるので、ユニクロのRFIDタグの話も今年から加えようと思います。是非、文理学部に入学して(在学している人も)、最先端科学技術の凄さを学修して下さい。