ナノとは何か?
物理学の分野は、広大な宇宙の世界から究極に小さな素粒子までをターゲットとしており、その両極端だけに未知の方程式が隠れており最先端の研究なのかというと違った面も持っています。クォークなど素粒子の性質が次々と明らかになっていますが、そんな小さい物質(?粒子)の性質が分かっているのだから、中途半端な大きさの物質など完全に理解できていると思われるかもしれませんが、実は違います。中途半端な世界にこそ分からないことだらけであり、その世界を記述できる方程式が解けなかったりするのです。
ナノテクノロジーという言葉が一時期、流行りました。研究の世界でも流行り廃りはあるのですが、ナノテクノロジーは現在も最先端の研究分野です。ナノでは、0.000000001mの大きさの世界を研究します。原子の大きさが、その1/10程度なので、原子・分子を操作し制御する原子の世界での究極技術なのです。ただ、物理学の素粒子から考えると遥かに大きな中途半端なサイズの世界なのですが、まだまだ完成されない(完成があるとは思えない)未開拓な研究が多く残っています。
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ブラウン運動
ブラウン運動とは何か、一目瞭然なので、上の動画をご覧下さい。この動画は、水の中に小さなプラスチック(直径1/1000mm)を入れて普通の顕微鏡で観察したものです。まるで、プラスチックが生き物のように動いているのが分かると思います。
なぜ、こんな動きをするのか、最初に説明をしたのは、あのアインシュタインだったりします。(誰も分からなくても問題ないのです。)水の中に存在する水分子が小さなプラスチック(プラスチックじゃなくてもよい)に衝突した影響が、こんな動きになっています。原子・分子は小さすぎて目で見えないかもしれませんが、そんな小さな分子の衝突をブラウン運動で目で見ることができるってクールだと思いませんか?
普通の顕微鏡といったのは、普通の光学顕微鏡のことで、中学や高校の理科室にある顕微鏡で実際に肉眼で接眼レンズを覗いて、このブラウン運動を見ることができるのです。
実際にアインシュタインの理論の後、ペランというフランスの物理学者がブラウン運動を詳細に研究して世の中に原子が存在することをアインシュタインの理論ともの証明したのでした。歴史的に考えると相対性理論が発表されたとき(特殊相対性理論)、原子の存在も確かではなかったという事実は科学の発展のいびつさを感じざるを得ません。
【ブラウン運動を理解するために】
ブラウン運動と非平衡統計力学 (学習院大学田崎先生の解説)
ウイスキーの物理学
研究テーマの話を展開しておきながら「ウイスキー」とは何事かと感じるかもしれませんが、一般向けの本の執筆を依頼されたとき、研究分野を紹介するのにウイスキーが馴染みやすいであろうと取り上げたのです。詳しい話は以前このページで記事にしているので、ご覧ください。
ちくま新書「知のスクランブル」の紹介
ナノの研究が難しい理由は、粒子が1個や2個ではないことがポイントです。原子や分子が、2個、3個、・・・とどんどん増えていくと、複雑さんもどんどんどんどん増していき、多数の粒子の動きになると複雑極まりなくなります。物理学の分野で多数の粒子を取り扱う研究に統計力学というものもあります。実は同じ理屈でウイスキーのような蒸留酒、つまりは、水分子とエタノール分子の混合液体が、どのように混合しているのか今もって明らかではないのです。水とエタノールは一番よく研究されている混合液体なのですが、そんな液体ですら誰もブラウン運動を通じて研究したことは無かったようで、不思議な現象が見つかったのです。